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【レビュー】強迫性障害への認知行動療法

【タイトル】強迫性障害への認知行動療法 講義とワークショップで身につけるアートとサイエンス

(著)ポール・サルコフスキス (監訳)小堀修、他

(出版社)星和書店 2011年9月29日 初版第1刷発行

ポール・サルコフスキス教授が開発した「強迫性障害用の認知行動療法」の解説書です。基調講演やワークショップの内容を文書化しています。そのため、ガッツリとした論文ではなく、プレゼンのような形態の書籍となっています。医療者向けの書籍なので、罹患直後の患者が、「第一冊目」として購入するような書籍ではありません。

心理学や精神療法の研究は、日本以外の先進国の方が進んでいますので、日本で売られている本でも「著者は外国の方」というケースは多いです。特に、強迫性障害においては、それが顕著な印象があります。

認知行動療法をテーマにした書籍ですので、薬物療法のことは書かれていません。従いまして、「この書籍だけで、強迫性障害の治療全部」がわかるわけではありません。

この書籍から、私が吸収したことを、散発的にですが、いくつかご紹介したいと思います。

OCDの方は、再保証を求めてきますが、それを与え続けると患者の不安感は減るのですが、再保証の効果は減っていくそうです。しかし、再保証を求める動きは減らないので、問題は悪化していくそうです。

この書籍では、認知行動療法(CBT)と暴露反応妨害法(ERP)の効果が比較されています。結果を端的に述べると、CBTの方が、効果があるとのことです。

CBTは強迫観念と強迫行為の両方に効果がありますが、ERPは強迫行為に焦点をあてているため、強迫観念にはあまり影響がないようです。また、強迫行為に関しましては、CBTの方が、成績が良かったものの、ERPとの間に有意な差はなかったようです。

「早発発症の患者」と「遅発発症の患者」を比べた場合、早発発症の患者の方が重症である場合が多いのですが、「治り」については、早発発症の患者の方がよく、遅発発症の患者とあまり差がなくなるようです。

最後に、「不安の公式」みたいなものが記載されていましたので、ご紹介したいと思います。

【不安の強さの4つの要因】

不安の強さ = (起こる見込みの知覚 × 起こった時の恐ろしさの知覚)/ (対応能力の知覚 + 援助の知覚) 

この図式は、回復アプローチを説明するときに、とても役立ちそうです。後日、別の記事で使いたいと思いました。

【レビュー】強迫性障害 病態と治療

【タイトル】強迫性障害 病態と治療 (著)成田善弘 

(出版社)医学書院 2002年第1版第1刷 2012年第1版第4刷

著者は、1966年に医学部を卒業されたご年配の先生です。初版からだいぶ時間が経過していますが、本書に書いてあることをわかりやすく説明しているサイトもありましたので、内容は現在でも通用するものになっていると思われます。

医療者向けに書かれた本なので、読むのに時間がかかりましたが、興味深い情報もたくさんありました。そのいくつかを、ここでご紹介したいと思います。尚、情報は「論文の引用」を含みますので、必ずしも著者先生が主張しているとは限りません。

男の子の強迫性障害は、「第一子」である場合が多いそうです。また、末っ子も多い、という情報もありました。養育のされ方は、「過保護・過干渉」の場合が多く、症状の特徴は「自己完結型」が多いそうです。これらは私にピタリと一致するため、読んでいて複雑な気持ちになりました(苦笑)。

一方、女性の強迫性障害は、「第二子」が多く、親から「かまってもらえなかった」というケースが多いそうです。また、症状の特徴は「巻き込み型」が多いとのことです。

ご年配の先生ですので、フロイト(精神分析学)にも詳しく、フロイトの研究についてもたびたび触れられていました。

著者先生は、薬物療法も行うし、精神療法も行うそうです。精神療法では、複数の精神療法を「いいとこ取り」で使っているようです。これは何かの理論が先だってそうなったのではなく、結果的にそうなったとのことでした。このことは、強迫性障害を速やかに治す「シンプルな治療法」は見つかっていない、ということを意味していると思います。

治療者の心理の様子も記載されていて、現場でどういったことが起きているのか、とてもイメージがしやすかったです。

全体的にバランスが良い本でしたので、手元に置いて何回も読みたいと思いました。

強迫性障害の回復アプローチ

多くの人は、「強迫性障害の予後は良くない」というイメージを持っていますが、実際はそうではなく、改善する人も多いと考えられています。具体的な数字は、研究者によって様々なので数値は出せませんが、書籍を読む限り、「まったく手が付けられない病気」ではないです。

実は、私はパニック障害の他に、強迫性障害もあったのですが、強迫性障害も完治に近いレベルをずっとキープしています。パニック障害については、今でも年に数日は困る日はあるのですが、強迫性障害については困ると感じる日は皆無に近いです。従いまして、私と同じタイプの強迫性障害であれば誰でも治せると考えています。

私は、物心ついたときから強迫性障害を患っていたので、どの時点で発症したのかは自分でもよくわかっていません。おそらく6歳未満の時だったと思われます。主な症状としては、「完璧主義で、途中で失敗すると最初からやり直す」というものと、「オマジナイ的な行動を何回もする」というものがありました。レベル的には中等症ぐらいだったと思います。尚、潔癖症のような症状は少なく、手洗いで困ったことはありません。

物心ついたときから発症していたため、苦痛は感じていましたが、「病院へ行く」という発想はありませんでした。また、「先天的なもので病院に行っても治らない」という思い込みもありました。このような状態が30代半ばまで続きました。

良くなったきっかけは、パニック障害になってSSRIを服用したことです。強迫性障害を治そうとしてSSRIを服用したわけではないのですが、結果として、それをきっかけに良くなっていきました。SSRIを断薬した後は、確認作業は増えたことは自覚しましたが、私の場合は再発までには至らず、再び軽快して現在に至っています。

私は、SSRIのおかげで治るきっかけを得たのですが、強迫性障害患者には認知行動療法が効果を示すので、最初はそちらを行うことをお勧めします。私は自分自身に認知行動療法を試すことはできませんでしたがが、「認知行動療法でもかなりの効果は得られただろう」という感触はあります。

強迫性障害の回復アプローチなのですが、児童と大人で少しだけアプローチの仕方が異なる部分があると予想しています。

児童の場合の回復アプローチ

強迫性障害のオマジナイ行動が生まれる原因は、「不安」だと私は考えています。ある不安に対して、適切な対処法がない場合、「オマジナイ行動」が生まれ、促進されていくと予想しています。おそらく、多くの人もこのように考えていると思いますが、私も同じです。

強迫性障害患者から「原因となる不安」を取り除くことは、オマジナイ行動を減少させることと同じくらい大切だと思うのですが、現状の治療では、「不安を減少させること」よりも「オマジナイ行動を減らすための認知行動療法」に傾きすぎていると感じます。

患者が低年齢であればあるほど、不安の発生源が親であることが多いと私は予想しています。子どもにとって、低年齢であればあるほど、親の重要性が増すからです。そうしたことから、患者が児童の場合は「親への教育」がとても重要になると思います。しかし、現状は「親への教育」はあまり行われていない印象です。「平素の接し方」が、子どもに不安を与えている可能性があるため、そこから見直さないといけない場合も多いと予想しています。

不安の発生減が「親ではない」という場合も、当然ながらあると思います。その場合でも、子どもには環境を変える力はないので、いずれにせよ、「親の対応能力の向上」が不可欠になっていると考えられます。

成人の場合の回復アプローチ

まずは、「強迫性障害以外の不安」があれば、それを小さくすることが大事だと思います。その後に、認知行動療法を行うといいと思います。

私は、30年以上にわたって強迫性障害を患っていましたが、「強迫性障害患者向けの既存の認知行動療法」はとてもよく考えられているように感じます。「もっと早く知りたかった」というのが私の率直な感想です。一方で、少しだけズレている、とも感じます。そして、このズレが治療の成否を分けていると考えています。

「どこがズレているのか?」ということなのですが、既存の認知行動療法は、「オマジナイ行動の減少」に注目しすぎている印象があります。本当に行わなければならないのは、不安を減少させることです。不安が減少すれば、オマジナイ行動は自然に減少しますので、「オマジナイ行動の減少」を目指すのではなく、「不安の減少」を目指します。

「オマジナイ行動の減少」は必ずしも「不安の減少」に繋がるとは限りませんので注意してください。例えば、やせ我慢をしてオマジナイ行動を減らせたとしても、それが新たな不安の発生源になれば、オマジナイ行動の減少は一次的なものになってしまいます。従いまして、治療に成功するパターンは次のようになると予想します。少なくとも、私はこのような感じで治りました。

不安が減少した → オマジナイ行動が自然に減少した

私の強迫性障害はSSRIで治ったのですが、SSRIを服用することによって、良い方向の「心境の変化」が起きました。私はこれによって不安が減少し、強迫性障害が治ったのだと考えています。

どのような心境の変化があったのかといいますと、私はSSRIを服用して、パニック発作の減少に成功しました。その時に、「SSRIが効果を示す脳の病気は治る」という認識を得ました。これが、私自身に「強い安心感」を与えました。SSRIを服用しているときは、オマジナイ行動は消失していましたが、SSRIを断薬した直後は少し不安感が復活し、それに伴いオマジナイ行動も少し復活しました。しかし、SSRIの断薬状態に慣れると、再びオマジナイ行動は消失方向に向かいました。それが今でも続いている、ということです。

SSRIを服用すると、不安に対して鈍くなるので、服用している間はオマジナイ行動が減少します。しかし、「心境の変化」が発生しなければ、安心感は得られませんので、薬を止めた時にオマジナイ行動も復活すると予想します。実際に、SSRIで治療した場合、強迫性障害の再発率は非常に高いです。

そうした理由で、私は下記のような仮説を立てています。

SSRIを服用すると、最初に「症状の減少」が起きるが、ここでSSRIを断薬してしまうと高確率で再発する。しかし、「強い安心感」が起きるまでSSRIの服用を続けると、SSRIの断薬後も安心感は持続するため、再発しにくい。

上記の仮説が正しいとすれば、「症状の減少」を最終目的とした認知行動療法は失敗しやすいが、「安心感の増大(不安感の減少)」を最終目的とした認知行動療法は成功しやすい、ということが言えるかと思います。

ここまで読んで、読者は「筆者はSSRIによって治った」と考えるかもしれませんが、それは正確な表現ではないと思います。私は、「認知行動療法が成立するようにSSRIを服用した」というのが正しいです。

重症のパニック障害患者の場合、発作が頻発するのでSSRIか、もしくはそれに代わる抗うつ薬の服用が必須になることが多いです。しかし、強迫性障害の場合はSSRIを服用しなくても改善するケースは多いと私は予想しています。従いまして、私がもし20代に戻れたとしたら、最初に「SSRIを使わない認知行動療法」を試します。それでも効果がない場合、「SSRIを使った認知行動療法」を試します

「安心感をもたらす認知行動療法はどうやって行うのか?」ということについては、次回以降の記事で述べたいと思います。

不安障害の回復アプローチ(共通記事)

注意事項

本サイトでは「パニック障害と全般性不安障害、強迫性障害、社会不安障害(社交不安障害)」を総称して「不安障害」と表現します。また、私は医師ではありませんので、この記事を基に医学的な判断は行わないでください。元患者であるため、経験的な立場から述べていきます。

筆者(六角大地)の紹介

30代半ばで重症のパニック障害を罹患。初期治療に失敗し、非常に苦労するが、SSRIを使用し回復。また、幼少期に中等症の強迫性障害を罹患。30年以上にわたって無治療だったが、パニック障害の治療が終わったら、自然に治癒していた。不安障害の治癒後、東京福祉大学心理学部に入学・卒業。精神保健福祉士(国家資格)。認定心理士。

不安障害の回復アプローチ

不安障害を治すには、私の経験上では、特別なことをする必要はありません。エビデンスのある治療を実践していくだけです。ただし、治療精度は上げなくてはなりません。

お医者さんが残してくれたデータは、私の印象では、良質なものです。そのおかげで、私は大きな回復を手に入れることができました。しかし、「お医者さんの指示に従っていれば治りますか?」と訊かれれば、私は「NO」と答えます。もし、不安障害が「お医者さんの指示に従えば治る」という病気であれば、なかなか改善しない患者さんは皆無になると思います。しかし、現実はそのようになっていません。

「なかなか治らない」という人は、たいてい、次のどちらかです。

  1. 医師に頼りすぎている
  2. 治療意欲が低い

1と2の患者さんに共通するのは、「勉強不足」ということです。「医師に頼りすぎている」という人は、「お医者さんが何とかしてくれる」と思い込んでいて、勉強不足になっていることが多いです。また、治療意欲が低くなってしまった人も、(病気に対する)学習意欲が低下していますので、勉強不足になります。

不安障害は、今現在も、速やかに治す方法は見つかっていません。しかし、「有効な方法」は見つかっており、「まったく太刀打ちできない」という訳でもありません。この「有効な方法」を効果的に使うと、「日常生活では困らない」という状態までもっていくことは十分可能だと私は考えています。

「お医者さんだったら、有効な方法を効果的に使ってくれるのではないか?」と考える人は多いかと思いますが、それは「予備校講師なら、一流大学に合格させてくれるのではないか?」と考えているのと似ていると思います。患者にしても受験生にしても、本人が努力しないと結果を残すことはできません。よいお医者さんを受診できだとしても、「患者の努力が不要になる」という訳ではありませんので注意してください。「治療が上手く行かない患者が多い」ということは、「治療を上手くナビゲートできない医師も多い」ということですので、患者は思考をストップさせてはいけません。「どうすれば今より良い状態になれるのか」ということを常に意識する必要があります。

不安障害に対しては、薬物療法や精神療法がありますが、どちらも「治療精度はあまり高くない」という状況です。不安障害の治療は、現在も研究中の分野なのだと私は思います。しかしながら、現状でも、お医者さんや先輩患者が残してくれた資料(情報)のおかげで、患者側でも治療精度を上げることは十分可能です。

本サイトでは、「どうやって治療精度を上げていくのか?」という記事を順次アップしていく予定ですが、不安障害の方は、パニック障害でなくても「パニック障害に関する記事」も読んで頂きたいです。実はパニック障害の治し方は分かりやすく、他の不安障害の治し方のヒントに十分なり得ます。他の疾患については、あまり知りたくないと思いますが、「こうすれば回復していきますよ」という内容ですので、怖い内容ではありません。本サイトでは、主にパニック障害関連の記事をアップしていきますが、それらはきっと他の不安障害の方にも役立つと思います。

精神の問題は、医療機関だけで治すわけではない、ということも覚えておいてください。例えば、「コミュニケーション能力に問題があって、職場(学校)で孤立し、うつ病になった」という患者さんの場合、「コミュニケーション能力の問題」と「うつ病の問題」が存在する訳ですが、このうち病院で治すのはうつ病だけです。コミュニケーション能力の改善は医療領域ではないため、基本的には病院ではカバーしません。

不安障害の治し方ですが、端的に言えば、「SSRI(抗うつ薬)と抗不安薬、精神療法の3つを使いこなせる能力」を身に付けることです。私は元患者ですが、先輩患者として言えることは、「不安障害は大きく回復させることが可能ですので、治療努力は惜しまない方がいいですよ」ということです。