社会不安障害(社交不安障害)の回復アプローチ

社会不安障害(社交不安障害)は、お医者さんの間でも「病気(脳の問題)なのか」それとも「個人の性格の問題なのか」ということで、意見が分かれている印象です。おそらく、心理士さんの間でも意見が分かれていると思います。この病気をどう見るかによって、初期対応が変わってきますので、どういう理由で意見が分かれているのか、患者は知っておく必要があるかと思います。そのために、社会不安障害の歴史を少し振り返ります。

1980年代頃は、米国でも社会不安障害はマイナーな病気として考えられていたようですが、1990年代の後半になると、とてもメジャーな精神疾患になっていきました。患者が激増した、ということです。この原因は未だにわかっていません。

私が子どもの頃(1980年代)は、社会不安障害は、一般的には病気と見なすことはほとんどありませんでした。昔から、「恥ずかしがり屋さん」だとか、「引っ込み思案」だとか、または「赤面する」という言葉は広く使われて、病気と言うよりも「その人の性格」だと考えられていました。このような感じでしたので、社会不安障害の場合、潜在的な患者数はもともと多く、それが段々と病気として認識されるようになったのだと考えられます。

一方で、同じ不安障害であるパニック障害患者も、1980年代頃はほとんどいなかったのですが、1990年代頃から激増しました。こうした事実を考えると、原因はわかりませんが、現代人は不安に対する感度が全体的にアップしてきて、それに伴い様々な症状が強くでるようになったのだと思います。

また、社会不安障害患者の激増については、「社会の変化」も大きく影響していると考えられます。昔は人の流動が激しくなかったので、知らない人と話すことはあまりありませんでした。また、製造業にしても非製造業にしても、決まりきった作業をすることが多かったのですが、現在は新入社員でもいきなり重要なプレゼンを任されるような時代になりました。社会構造の変化によって、「恥ずかしがり屋さん」の苦痛が、昔とは比べ物にならないくらい大きくなったとも考えられます。

その他、「製薬メーカーがSSRI(抗うつ薬)を売り込むために、社会不安障害という病気を広めた」という考えもあります。そのように見ている人(お医者さんや心理士さん)は少なくない、ということです。SSRIは発売当初、派手なキャンペーン(宣伝活動)があったのでそのように考えることもできますが、もし仮にそうだとすると、キャンペーン終了後に患者数は大きく減少しているはずです。しかし、そうした情報は見当たりませんので、製薬メーカーの影響だけで患者数が激増したとは考えにくいです。

このような理由から、社会不安障害については「病気」なのか、はたまた「性格の問題」なのか、見分けることが難しいです。

社会不安障害への対応方法ですが、「病気(脳の問題)」が強ければ薬物療法が、「性格の問題」が強ければ訓練が治療(改善)の主軸になるかと思います。しかし、その他にも「環境を変える」という選択肢もあり、こちらもかなり有効だと思います。

環境を変えることの大切さに少し触れて起きたいと思います。米国では1900年前後に産業革命が起きたのですが、その時、多くの若者たちが工場勤務に「対応」できませんでした。人には向き不向きがあり、「病気でなくても対応できない」ということは多々あります。同じようなことが、社会不安障害患者の方にも言える場合もあると思います。

現在の学校や職場は、持続的な緊張を強いてきます。例えば、乗り物の運転手であれば、長時間トイレに行けないこともありますし、集中力も必要です。こうしたことは、人間の生理現象に逆行しますので、人によってはすぐに不調をきたすこともあるかと思います。従いまして、生理現象が激しい人には、自分に合った仕事をすることが大切です。

ここでいったん整理しますと、社会不安障害への対応方法は大きく分けると、下記のとおりです。

  • 薬物療法
  • 訓練(認知行動療法)
  • 環境を変える

これらのうち1つだけ行っても改善するケースはあると思いますが、仮にそうだとすると、簡単に治癒できる人が続出するはずですので、そうしたケースは少ないかもしれません。実際の治療では、これらを使い分けていくケースが多いかと思います。

「脳の問題」で苦痛が発生している場合は、薬物療法が有効(あるいは必要)になりますが、反対に「性格の問題」で苦痛が発生している場合は、少なくとも本格的な薬物療法は不必要になります。患者は、社会不安障害患者が激増した背景等も考慮しながら、対応を決めていく必要があるかと思います。下記に、「自分だったらどうするか」という立場から、回復アプローチについて述べます。

軽症の場合

私は、「人前で何かをする」というのが苦手で、人前だといつもできることができない、ということがしばしばありました。(今でもあります)。「これは誰でもそうだよ」と言われればそうなのですが、おそらく、一番症状が酷いときに病院を受診していれば、軽症ではありますが、「社会不安障害」と診断されていたと思います。

私は、パニック障害のためSSRIを服用しましたが、軽症の社会不安障害では、SSRIの服用はお勧めしません。SSRIを服用して「不安の感度」が鈍くなったとしても、それは一次的なことで、SSRIの服用を止めてしまえば緊張感は復活すると思います。少なくとも私の場合はそうでした。SSRIを服用しても、もともとの性格までは治らないと思います。

幸い、社会不安障害では、認知行動療法の効果がでやすいと思います。認知行動療法に詳しくなって、自分自身で訓練内容をカスタマイズできるようになることが大事です。そして、それでも改善しない場合は、「SSRIが必要な局面」と判断します。

「年に1回あるかないかの大イベントでのスピーチやプレゼンが怖い」という場合は、「その時だけ抗不安薬を服用する」という方法もあると思います。しかし、それだけのために病院を受診するのは考えた方がいいかもしれません。その場合は、「こころまりも相談室」までご相談ください。

重症の場合

重症の場合は、「脳の問題」の可能性が高いので、SSRIの服用を検討する必要があるかと思います。SSRIは服用のしかたが難しいので、その特性について詳しく知る必要があります。SSRIを服用して速やかに治るのであれば、患者さんもお医者さんも苦労することはありませんが、実際はそうなってはいません。どうすればSSRIの効果を引き出せるのか、患者側も知っておく必要があります。