強迫性障害の回復アプローチ

多くの人は、「強迫性障害の予後は良くない」というイメージを持っていますが、実際はそうではなく、改善する人も多いと考えられています。具体的な数字は、研究者によって様々なので数値は出せませんが、書籍を読む限り、「まったく手が付けられない病気」ではないです。

実は、私はパニック障害の他に、強迫性障害もあったのですが、強迫性障害も完治に近いレベルをずっとキープしています。パニック障害については、今でも年に数日は困る日はあるのですが、強迫性障害については困ると感じる日は皆無に近いです。従いまして、私と同じタイプの強迫性障害であれば誰でも治せると考えています。

私は、物心ついたときから強迫性障害を患っていたので、どの時点で発症したのかは自分でもよくわかっていません。おそらく6歳未満の時だったと思われます。主な症状としては、「完璧主義で、途中で失敗すると最初からやり直す」というものと、「オマジナイ的な行動を何回もする」というものがありました。レベル的には中等症ぐらいだったと思います。尚、潔癖症のような症状は少なく、手洗いで困ったことはありません。

物心ついたときから発症していたため、苦痛は感じていましたが、「病院へ行く」という発想はありませんでした。また、「先天的なもので病院に行っても治らない」という思い込みもありました。このような状態が30代半ばまで続きました。

良くなったきっかけは、パニック障害になってSSRIを服用したことです。強迫性障害を治そうとしてSSRIを服用したわけではないのですが、結果として、それをきっかけに良くなっていきました。SSRIを断薬した後は、確認作業は増えたことは自覚しましたが、私の場合は再発までには至らず、再び軽快して現在に至っています。

私は、SSRIのおかげで治るきっかけを得たのですが、強迫性障害患者には認知行動療法が効果を示すので、最初はそちらを行うことをお勧めします。私は自分自身に認知行動療法を試すことはできませんでしたがが、「認知行動療法でもかなりの効果は得られただろう」という感触はあります。

強迫性障害の回復アプローチなのですが、児童と大人で少しだけアプローチの仕方が異なる部分があると予想しています。

児童の場合の回復アプローチ

強迫性障害のオマジナイ行動が生まれる原因は、「不安」だと私は考えています。ある不安に対して、適切な対処法がない場合、「オマジナイ行動」が生まれ、促進されていくと予想しています。おそらく、多くの人もこのように考えていると思いますが、私も同じです。

強迫性障害患者から「原因となる不安」を取り除くことは、オマジナイ行動を減少させることと同じくらい大切だと思うのですが、現状の治療では、「不安を減少させること」よりも「オマジナイ行動を減らすための認知行動療法」に傾きすぎていると感じます。

患者が低年齢であればあるほど、不安の発生源が親であることが多いと私は予想しています。子どもにとって、低年齢であればあるほど、親の重要性が増すからです。そうしたことから、患者が児童の場合は「親への教育」がとても重要になると思います。しかし、現状は「親への教育」はあまり行われていない印象です。「平素の接し方」が、子どもに不安を与えている可能性があるため、そこから見直さないといけない場合も多いと予想しています。

不安の発生減が「親ではない」という場合も、当然ながらあると思います。その場合でも、子どもには環境を変える力はないので、いずれにせよ、「親の対応能力の向上」が不可欠になっていると考えられます。

成人の場合の回復アプローチ

まずは、「強迫性障害以外の不安」があれば、それを小さくすることが大事だと思います。その後に、認知行動療法を行うといいと思います。

私は、30年以上にわたって強迫性障害を患っていましたが、「強迫性障害患者向けの既存の認知行動療法」はとてもよく考えられているように感じます。「もっと早く知りたかった」というのが私の率直な感想です。一方で、少しだけズレている、とも感じます。そして、このズレが治療の成否を分けていると考えています。

「どこがズレているのか?」ということなのですが、既存の認知行動療法は、「オマジナイ行動の減少」に注目しすぎている印象があります。本当に行わなければならないのは、不安を減少させることです。不安が減少すれば、オマジナイ行動は自然に減少しますので、「オマジナイ行動の減少」を目指すのではなく、「不安の減少」を目指します。

「オマジナイ行動の減少」は必ずしも「不安の減少」に繋がるとは限りませんので注意してください。例えば、やせ我慢をしてオマジナイ行動を減らせたとしても、それが新たな不安の発生源になれば、オマジナイ行動の減少は一次的なものになってしまいます。従いまして、治療に成功するパターンは次のようになると予想します。少なくとも、私はこのような感じで治りました。

不安が減少した → オマジナイ行動が自然に減少した

私の強迫性障害はSSRIで治ったのですが、SSRIを服用することによって、良い方向の「心境の変化」が起きました。私はこれによって不安が減少し、強迫性障害が治ったのだと考えています。

どのような心境の変化があったのかといいますと、私はSSRIを服用して、パニック発作の減少に成功しました。その時に、「SSRIが効果を示す脳の病気は治る」という認識を得ました。これが、私自身に「強い安心感」を与えました。SSRIを服用しているときは、オマジナイ行動は消失していましたが、SSRIを断薬した直後は少し不安感が復活し、それに伴いオマジナイ行動も少し復活しました。しかし、SSRIの断薬状態に慣れると、再びオマジナイ行動は消失方向に向かいました。それが今でも続いている、ということです。

SSRIを服用すると、不安に対して鈍くなるので、服用している間はオマジナイ行動が減少します。しかし、「心境の変化」が発生しなければ、安心感は得られませんので、薬を止めた時にオマジナイ行動も復活すると予想します。実際に、SSRIで治療した場合、強迫性障害の再発率は非常に高いです。

そうした理由で、私は下記のような仮説を立てています。

SSRIを服用すると、最初に「症状の減少」が起きるが、ここでSSRIを断薬してしまうと高確率で再発する。しかし、「強い安心感」が起きるまでSSRIの服用を続けると、SSRIの断薬後も安心感は持続するため、再発しにくい。

上記の仮説が正しいとすれば、「症状の減少」を最終目的とした認知行動療法は失敗しやすいが、「安心感の増大(不安感の減少)」を最終目的とした認知行動療法は成功しやすい、ということが言えるかと思います。

ここまで読んで、読者は「筆者はSSRIによって治った」と考えるかもしれませんが、それは正確な表現ではないと思います。私は、「認知行動療法が成立するようにSSRIを服用した」というのが正しいです。

重症のパニック障害患者の場合、発作が頻発するのでSSRIか、もしくはそれに代わる抗うつ薬の服用が必須になることが多いです。しかし、強迫性障害の場合はSSRIを服用しなくても改善するケースは多いと私は予想しています。従いまして、私がもし20代に戻れたとしたら、最初に「SSRIを使わない認知行動療法」を試します。それでも効果がない場合、「SSRIを使った認知行動療法」を試します

「安心感をもたらす認知行動療法はどうやって行うのか?」ということについては、次回以降の記事で述べたいと思います。